午後八時

夕食を食べ終えた正太郎とみくは緑地公園へ

しかしそこで待っていたのは数十人の女の子達だった

「ねぇ、お名前は?」

「キミ、可愛いね。年は幾つ?」

「ねぇねぇ、どこの学校なの?」

女の子達は正太郎を取り囲む様に群がった

「え?いや、その・・・」

そう言って困惑する正太郎

「何やねん、お前ら」

みくは怒りを露わにするが多勢に無勢、全く効果がない

「こうなったら・・・」

そう言って力ずくで突破口を開こうとした時に向こうから雷衣が現れた

「美甘先輩、今日はよく会いますね」

「そうですね」

「こんな時間に来ると言う事は幽霊を探しに来たのですか?」

「うん、そのつもりだったけど何か賑やかそうだね」

「ええ、今日は合同花火大会をする事になっていましたので」

「『合同』ってどういう事や?」

「はい、お二方も知っての通りこの町『蘭花町』は『赤蘭』『青蘭』『黄蘭』そしてこの地区『白蘭』四つの地区に別れています」

「それは聞いた事があるよ」

「それぞれの地区にはそれぞれの学校の生徒が作ったチームがありその統一チーム『蘭花連合』が誕生してから交流を深める為にイベント事を合同でする事にしたんです」

「そうだったんだ」

「それで夏と言えば『花火』と言う訳で花火大会をここでする事になったんですよ」

「それじゃあ、邪魔する訳には行かないから向こうで終わるまで待っているよ」

そう言ってベンチへ向かう正太郎達

「そう言わずにせっかく来たんですから一緒にやりましょうよ。ほら柳木先輩も」

雷衣はみくの腕を持ってそう言った

「ウチ、花火やった事無いから・・・」

みくがそう言うと正太郎は

「花火見た事はあるの?」

「えっ?見た事はあるけど・・・」

「じゃあ、やってみようよ。何事もチャレンジだよ」

正太郎はみくの手を握り引っ張る

「『チャレンジ』って言うほどの物じゃ無いですけど見てるよりする方が面白いですよ」

雷衣もそう補てんする

「じゃ・・・やってみよか」

正太郎達は雷衣達と花火大会をする事になった

 

「凄いもんやな〜」

公園内の中央広場では色とりどりの花火がついては消えを続けていた

「これだけの大人数ですると本当の花火大会みたいだね」

正太郎はそう言いながら線香花火に火を付けていた

「何や、そのちっこいの?」

「線香花火だよ。普通は最後にする物だけど僕はこれが一番好きなんだよ」

そう言って線香花火を見つめていた

みくはそんな正太郎の姿を見つめていた

「えーっと、皆さん聞いて下さい」

雷衣の言葉に一同は静まりかえる

「今大会のメインイベントである『パラシュートキャッチャー』を始めようと思うので参加する方は広場中央に集まって下さい」

「何か始めるみたいだね」

「そうみたいやな」

正太郎達は雷衣の居る方へ向かう

「それでは『パラシュートキャッチャー』の説明をします。このパラシュート花火が五発連続発射されます。そのパラシュートを取った方が商品を貰えます」

雷衣の指し示す先には大きな物から小さな物まで五つの商品が置いてあった

「何が入っとんや?」

「それは開けるまでの秘密です」

「僕は競争とかあまり得意じゃないから止めとくよ」

「ウチ参加しようかな・・・」

「参加するのであれば参加費五百円頂きます」

「金取るんかい!」

「いえ、商品の仕入れにお金が掛かっているので参加費を貰わない訳には行かないので」

「それやったらしゃあないな」

そう言ってみくは財布を取り出すが中には五円玉しか入っていなかった

「五円しか入ってない」

凹むみく

その姿を見た正太郎は財布を取りだし五百円を出しみくに渡す

「はい、五百円」

「ええんか?」

「だってやりたいんでしょ。それに競争と聞いて引く様なお姉ちゃんじゃないし」

その言葉にみくは感動し

「よっしゃ、商品取れたら正太郎にプレゼントするで〜じゃあ、これ五百円な」

みくは正太郎から受け取った五百円を雷衣に渡す

「頑張ってね、お姉ちゃん」

「まかしとき」

みくは他の参加者と共に所定の位置に着き発射を待った

「それでは行きます」

雷衣が花火に火を付け数秒後五発同時に発射された

「うりゃ〜〜〜〜〜〜っ」

みくは一番近くに見えたパラシュートに目標を定め走っていった

しかしそのパラシュートは運悪く木の枝に引っかかった

周りからは落胆の声が聞こえたがみくは

「いや、まだや。うりゃ」

そう言ってその木の根元に走り込み思いっきり蹴り込んだ

その揺れで落ちてくるパラシュート

下で待ち受ける参加者達

「コレはウチと正太郎のもんや〜」

そう言って戻ってきたみくは落ちてきたパラシュートを空中でキャッチ

そして空中で一回転し見事に着地する

他の参加者達は驚きと落胆の声

「取ったで〜」

そう言って雷衣の元へ向かう

「一番乗りですね。じゃあ、この中から一つ選んで下さい」

その言葉にみくはすかさず一番大きな袋を取った

「じゃあ、コレ」

「え、それですか?」

「アカンのか?」

「いえ、別に構いませんが」

「じゃあ、貰っていくで」

みくは嬉しそうに正太郎の元へ向かった

「はい、正太郎。お土産や」

みくは正太郎に袋を渡す

「流石だね、お姉ちゃん」

「当たり前や、運動で負けたらウチの名が廃るで。それに・・・」

正太郎の為やからと言いたいがみくの言葉は籠もっていた

「それに?」

「いや、その中学生に負ける訳にはいかへんからな」

みくは照れ隠しの様に言った

「それじゃあ、メインイベントも終わった所でぼちぼち終わりにしましょうか」

そう言って雷衣は全員を集めた

「本日は合同花火大会に参加して頂き有り難う御座いました。今後も色々な催しを開催する予定なので奮って参加して下さい〜」

その後長々と続いた雷衣の演説が終わり皆は後片付けをして帰っていった

 

皆が帰ったあと残った二人はベンチに座っていた

「今日はもう出てこないのかも」

「賑やかやったからな」

「お姉ちゃん、花火は面白かった?」

「面白かったで。やっぱり見てるだけやったらわからへんもんなんやな」

「世の中全て経験しなきゃ分からない事だらけだよ」

「だから正太郎はこうやって幽霊出るの待ってるんか?」

「そうだよ。僕は普通の人と違って幽霊を見たり会話したりする事が出来る。それを忌み嫌う人もいるけど持って生まれた能力だからその事を生かさないと」

「凄いんやな。正太郎は」

「そんな事無いよ。僕はただこの能力が人の役に立つなら惜しまず使おうと思っているだけだよ」

そう言って空を見る正太郎

みくはそんな正太郎を見ながら自分がやるべき事を考えていた

三十分後、眠たくなりながらも公園を見つめる二人

「ぼちぼち帰って寝た方がええんとちゃう?」

みくの言葉に時計を見る正太郎

「じゃあ、あと三十分だけ」

そう言って正太郎は公園を見渡す

(幽霊だか何だか知らへんが早よ出てこいっちゅうねん)

みくはそう思いながら茂みの方を見た

すると白い靄の様な物が見えた

「正太郎、アレとちゃうか?」

そう言って正太郎と共に靄の正体を確かめに行く

近づくと段々形が見える様になりそれが男性の幽霊だと分かった

「こんばんは」

正太郎は普通に挨拶をした

「私が見えるのですか?」

「ええ、見えますとも」

「そうですか。それはそれは」

「一つ聞きたいのですが宜しいですか?」

「ええ、何でも聞いて下さい」

「最近、この一帯で何か変な事とかありませんでしたか?」

「その事なんですがこの先に森があり我々はそこに行こうとしていたのですがその手前のトンネルで化け物が現れるらしく困っているのです」

「何で幽霊がバケモンなんか怖がっとんねん」

「幽霊だって怖い物は怖いんですよ。それに仲間の幽霊達も何人かは食べられてしまって私はここまで逃げてくるのに必死だったんですから」

「そうですか・・・分かりました。その化け物は僕が何とかします」

「本当ですか?」

「はい。それで出来ればその化け物の特徴とか聞きたいのですが」

「分かりました」

正太郎と幽霊の男性はその後10分ほど話していた

「大体分かりましたので僕達はこれで」

「必ず退治して下さい」

「分かりました。でもあまり現世に留まらずに成仏した方が良いですよ」

「ええ、森へ行けたらそうします」

そう言って男性の幽霊は消えていった

 

正太郎達は夜の商店街を歩く

「結局プールの一件については分からへんかったな」

「僕は何となく分かったよ」

「ホンマか?」

「うん。多分あの人が公園に留まっていて他の幽霊達に化け物の噂をしていたからトンネルへ向かう人が居なくてお腹を空かして出てきたんだと思うよ」

「そうやったんか」

「でも、もしそうだとするとこれから先もっと深刻な被害が出るかも知れない」

「それやったら早く退治せなアカンな」

「今の僕に出来るかどうかは分からないけど頑張るよ」

そう言ったあと正太郎は黙ってしまいみくは話しかけられずに家に帰った